役員の選任について -NPO法人の組織のあり方を考える-

日本バドミントン指導者連盟理事
筑波大学大学院人間総合科学研究科・体育科学系
齋藤健司

 日本バドミントン指導者連盟定款第4章は、役員及びその職務について定めている。特に定款第16条は、本連盟の役員の任期を2年とし、再任を妨げないことを定めている。もともとNPO法人の役員の任期については、法律上2年以内としなければならないことになっている。したがって、この定款上の役員の任期に関わる規定も法律に準じて定められたものである。そして、本連盟がNPO法人として認証されてから2年目を迎える今年度は、この定款の規定に基づいて役員の任期及び選任について何らかの具体的な対応をとるべき時期となった。本連盟の設立総会においても、役員の選任をどのように定めるかについて若干の質疑があったと記憶しているが、指導者連盟はまだ役員そのもののあり方や役割分担も明白でない組織的に未成熟な状況であったことに鑑みて、具体的な規定を定めることはその後の検討課題となっていた。唯一、定款第13条第2項の通り、役員の選任方法を理事会が後に定めることが議決された。その後、理事会では役員の選任をどのようにするかについて議論されてきたが、2006年5月6日に千駄ヶ谷区民会館で開催された平成18年度第1回理事会において、下記の「役員選任規程」が承認され、同日に行われた平成18年度総会において同規程が報告された。

 NPO法人の定款を作成する場合には、役員に関する規定を設けることになっているが、NPO法は役員をどのように選任するべきかまでについては、具体的強制的な規定を設けていない。つまり、NPO法人の役員の選任や組織運営のあり方は、その団体の自主的な判断に委ねられていると言える。しかし、ある法人において、その法人を代表し実質的な運営を行う理事の選任規定をどのように定めるかは、その団体の組織運営のあり方を左右する重要な事項であると言える。

 例えば、これまでの日本のスポーツ団体の多くは、民法上の財団法人または社団法人として設立されてきた。民法ではこれら公益法人の寄付行為または定款において理事の任免に関する規定を置くことが定められている。そして、それぞれの公益法人は理事の選任の方法をそれぞれに規定してきた。一般的に財団法人では、1.理事会または評議員会が理事の選任機関となる場合、または、2.理事長が直接理事を任命もしくは選任する場合がある。この他、社団法人では、3.社員総会で理事を選任する場合がある。しかし、このような公益法人における現実の役員組織を見てみると、同じ理事が常に理事になっていたり、一部の役員によって理事を選任する慣行が続いたり、会員の知らないところで、もしくは会員が理事の選出に関与することなしに、理事が選任される場合がある。団体の組織運営の継続性や専門性を考えると、経験豊かな理事が継続して職務を遂行することも必要であると考えられるが、理事が理事を選任する手続きの中では、長年に渡って団体役員になり続けたり、それまで団体の運営とどのような関係があったのかよく分からない政治家や官僚等が理事等に指名されたりすることも生じてきた。同様に、スポーツ競技団体でも、このような公益法人の役員人事をめぐる課題が存在していると言える。スポーツ競技団体は、そのスポーツに関する国内の組織運営を担う極めて公共的な団体としての使命が増してきており、役員の選任に関しても、広く公共の観点から役員の固定化を避け、民主的な運営が期待されるようになってきている。

 このようなこれまでのスポーツ競技団体が抱える組織的な課題を調整するためにどのようにしていけばよいのかが、今回の指導者連盟の役員の選任をめぐっても議論となった。指導者連盟は、まだできたばかりの全国的な組織であり、この会の運営を軌道に乗せ、組織の充実を図っていくためには、一方では役員の継続的な選任がある程度必要であると考えられる。しかし、他方で、これまでの日本の公益法人の抱える役員組織の固定化、権限の集中、選挙への会員の不参加などの問題にどのように対応していくかが問われているのである。このような議論を踏まえて、本連盟の役員、特に理事の選任については、主に次の3つの原則に基づいて決定し、新しいスポーツ団体のあり方を今後模索していくことになった。

第1に、理事は、正会員の直接選挙によって選出される。理事の選出については、会員すべてが平等に投票権を持つことになった。今後も会員数が増加していくであろう全国的な団体としては、直接選挙を実施することは異例のことであるかもしれない。しかし、団体の公共的民主的な運営を考えると必要な措置であると考える。また、具体的な選挙手続きについては、今後、独立した選挙管理委員会が進めることとなっている。

 第2に、理事の3分の1程度が改選される。また、理事会は、改選の対象となる理事と再任される理事を互選により決定する。理事を理事会等の上部の選任機関によってだけ常に決定することも制度上可能であるが、それでは役員が固定化する危険性もあるため、任期ごとに3分の1ずつ改選される方式が採用された。このようにして導入された理事の直接選挙の時期に、選挙を通して、理事も会員も、指導者連盟の組織運営のあり方について改めて考えてみる機会とすることが望まれよう。また、すべての理事を選挙で一度に選出することも考えられたが、現在の理事役員による長期的ビィジョンに基づく事業計画の推進や連盟の組織運営の継続性の観点から、3分の2程度の理事は職務を引き継ぐべきことになった。逆に、すべての理事を理事会で決定することも考えられたが、理事の固定化を避け、指導者連盟の会員の組織運営への参加の機会を確保するために、そのような規定は設けられなかった。

 第3に、理事選挙の被選挙人には、正会員1名より推薦を受け、被選挙人自らも同意した者であれば、誰でもなることができる。また、役員であろうと会員であろうと、正会員1名につき被選挙人1名しか推薦することができない。指導者連盟の組織運営へ積極的な参加をのぞみ、具体的な意見を会員に提示し、そのことの賛同が広く会員から得られれば、誰でも理事となることが可能となっている。

 このような方式の理事選挙によって、新しいスポーツ団体の組織運営のひとつのあり様を日本の社会やスポーツ界全体に向けて問い直すきっかけとすることができればすばらしいことであると考える。

このほか、NPO法では、団体の親族による支配を制限するために、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が1人を超えて含まれること、または、当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の3分の1を超えて含まれることを禁止している。本連盟の定款第13条第4項もNPO法に準じてそのことが規定されている。

団体の定款や諸規程は、その団体のあり方を定める重要なものである。今後も指導者連盟の益々の発展に向けて、諸規定に関する生産的で活発な論議が展開されることが望まれる。